支部長挨拶

 (公社)日本水環境学会関西支部会員の皆様には、日頃より関西支部活動にご支援をいただきありがとうございます。この度、私は米田稔前支部長の後を引き継ぎ、第33~34期の関西支部支部長として八木正博副支部長、川嵜悦子副支部長、川崎直人副支部長、矢吹芳教幹事長、緒方文彦会計幹事とともに新体制を組み、これから2年間の支部活動に臨むことになりました。

 関西支部は、大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県の水環境学会会員から構成され、大学、地方行政機関、企業、NPO等に所属する各会員の方々のご協力により各地域の水環境の保全に貢献することをめざして活動を行っています。会員の方々の調査・研究対象は、生活に密着した飲み水、下水を始めとして、水環境としての海域(大阪湾、播磨灘、宮津湾等)、自然湖沼(琵琶湖等)、ダム湖、ため池、河川(淀川、加古川、由良川、紀の川、大和川等)、地下水、降水まで非常に幅広い領域となっています。

 高度経済成長期の1960~70年代には生活排水や各種工場・事業場排水による水質汚濁が公害問題となり、その問題解決のために精力的な調査研究が進められてきました。例えば、飲料水のカビ臭発生メカニズムとその除去に関する研究、生活排水や工場排水の高度処理に関する研究、大阪湾や播磨灘における赤潮の発生メカニズムに関する研究、内湾や湖沼における底層の貧酸素化メカニズムに関する研究、琵琶湖の富栄養化防止に関する研究などです。これらの調査研究成果は、行政施策に活かされ、様々な対策実施の結果、今日では水に関わる公害問題はかなり解消されてきています。

 一方、栄養塩負荷量が削減され、赤潮発生などの富栄養化問題が解消されてきたにも関わらず、一部の海域や湖沼では底層の低酸素化問題が未だに解決されていません。これは、沿岸の埋立などの人為的な地形変化により底層の水が停滞しやすいことが原因になっていることが指摘されており、解決のためには土木工学や海岸工学分野の研究者、技術者、行政部門との協力が必要となっています。

 さらに、海域や琵琶湖で新たに問題となっている現象として「貧」栄養化現象があります。陸域から流入する栄養塩負荷量が削減され、植物プランクトンの増加が原因となって発生する赤潮などの問題は解決されてきましたが、一次生産量が減ったことにより、食物連鎖ピラミッドの上位にある魚介類の生産量が減少してきているのが「貧」栄養化現象です。また、瀬戸内海では、栄養塩負荷量が減ったことによりノリの生産量が減少していると言われています。このような「貧」栄養化現象は、ヨーロッパの湖沼で勢力的に研究されており、例外はあるものの、多くの湖沼で栄養塩負荷量の減少に伴い雑食あるいは動物プランクトン食の魚の漁獲量が減少し、その後タイムラグを伴って、魚食性の魚の漁獲量も減少していることが報告されています。このようなことから、今後の栄養塩管理は、上水、観光、農業、水産などの各種水利用者間での調整・最適化が必要で、そのための科学的根拠となる調査研究が求められています。

 このように現在の水環境問題は、公害時代とは異なる局面になっており、より総合的、多面的な視点での調査研究が求められていると感じています。そのような多面的な調査研究の支援を含めて会員の皆様の要望に応える講演会や見学会の開催や会員相互の交流を進めていきたいと考えています。皆様の学会活動への積極的なご参加、ご協力をお願いいたします。ご意見、ご要望等がございましたらメールでお寄せください。

第33・34期関西支部長 大久保卓也 (滋賀県立大学環境科学部)